通信制高校を卒業した人々の中には、チャットレディとして働く選択をするケースが増えています。この背景には、単純な経済的理由だけでなく、複雑な心理的要因や社会的な背景が絡んでいます。本コラムでは、なぜ通信制高校卒業者にチャットレディが多いのか、その理由について考察します。
通信制高校の卒業者の背景
通信制高校には、さまざまな事情で通学制の学校に通えなかった人たちが集まります。不登校経験者や人間関係に悩んでいた人など、学業以外の部分で困難を抱えていた生徒も多く在籍しています。
「彼らの多くは通学や、学習、そして人間関係の構築に対する期待や不安を抱き、入学時にこれまでの暮らしをリセットする。そのラポール形成の背景として、入学前の生徒と教職員との面談(個別相談)が義務付けられている。生徒にとっては面談をしている目の前の『大人』(教職員)から入学後受けるであろうサポートや、学校そのものを信じられるからこそ入学の意思が高まり、そのことが入学後のラポールの形成に有益に働くのだと考えられる。リセットの背景には同じ中学出身の生徒がほぼおらず、入学を機に新しい人間関係の構築を図れることがあると考えられる。」
石倉篤; 中田行重. 不登校経験者が通う通信制高等学校における通学の継続に関する一考察. 関西大学心理臨床センター紀要, 2022, 13: 1-11.
このように、新しい環境で再スタートを切ることが多い通信制高校の生徒は、自由な学習スタイルと柔軟な時間管理の中で自己をリセットすることができます。しかし、社会との繋がりや自己肯定感が希薄な状態で卒業後に直面する社会の現実は、彼らにとって大きな不安要素となることがあります。
チャットレディを選ぶ理由
通信制高校を卒業した若者がチャットレディを選ぶ理由として、まず考えられるのは「時間の自由度」と「高収入」の魅力です。これらは通常のアルバイトや職業では得られにくいものであり、自分のペースで働ける点が、彼らにとって大きな利点となっています。
しかし、チャットレディの仕事には身バレのリスクや精神的な負担も伴います。通信制高校の卒業者の中には、社会での孤立感や自己肯定感の低さから、周囲に秘密を持つことに不安を感じる人もいます。
「身バレをする理由としては主に5点あります。
– 家族に疑われた
– 友達や知人に仕事のことを言った
– 家族に仕事のことを言ってしまった
– 自分で個人情報を言ってしまった
– 変装せずに仕事した」
チャットレディの身バレ対策~その方法本当に大丈夫?
こうした身バレのリスクは、家族や友人に知られたくないという強い気持ちと相反する結果を生み出すことが少なくありません。
自己肯定感と孤立感の克服
通信制高校卒業者に多く見られる自己肯定感の低さや社会的な孤立感は、チャットレディという選択肢が一時的に経済的な自立を提供する一方で、根本的な問題の解決には繋がらない可能性があります。社会的なサポートやメンタルケアが必要であることは明白です。
また、通信制高校では新しい人間関係を築く機会が多い反面、その関係が社会に出た際にどのように活用できるかという課題も残ります。再スタートを切るために通信制高校を選んだ若者たちが、卒業後に社会でより良い人間関係を築き、自分自身を肯定できるようなキャリアを選べるようにするためには、教育機関や社会全体の支援が求められます。
最後に
通信制高校卒業者がチャットレディとして働く背景には、柔軟な働き方や高収入への魅力がある一方で、社会的な孤立感や自己肯定感の低さが影響している可能性があります。これらの若者が持つ潜在的な不安や課題に対して、社会全体で理解し、サポートしていくことが重要です。